都会の秘境!JR鶴見線はなぜ無人駅だらけ?大川駅の衝撃的な時刻表の謎も調査!

ココがキニナル!
鶴見線の駅のほとんどが、無人または自動改札なのはなぜ?(どらさまさんのキニナル)鶴見線の大川駅くらい運行本数が少ない駅はないのでは?(airgrooveさん、他2名のキニナル)
はまれぽ調査結果!
鶴見線は極端な「通勤特化」路線であるため!また、鶴見線の大川駅以外にも「都会のローカル線」は僅かながら存在する!
ライター:新はまれぽ編集部
東京と横浜に挟まれた京浜工業地帯。
日本の産業を支えるこのエリアの中心部を走る「JR鶴見線」は、首都圏の路線でありながら、他の鉄道とは一線を画す独特な雰囲気を持っています。
レトロな駅舎、工場地帯の真ん中を走る車窓、そして時折訪れる静寂から、鉄道ファンには「都会の秘境路線」として愛されています。
しかし、初めて鶴見線を利用する方は、その特殊な状況に驚くかもしれません。
今回は、そんな鶴見線に寄せられた2つのキニナルについて、その誕生の歴史から未来の展望まで調査しました!
1. 鶴見線の誕生:京浜工業地帯と共に生まれた「産業鉄道」
鶴見線の謎を解く鍵は、その成り立ちにあります。
鶴見線はもともと、一般の乗客を運ぶことを主目的として作られた路線ではありませんでした。
その前身は、大正時代末期から昭和初期にかけて設立された私鉄「鶴見臨港鉄道」です。
当時、日本の近代化が進む中、「セメント王」と呼ばれた実業家・浅野総一郎氏らが中心となり、川崎・鶴見の沿岸部で大規模な埋め立て事業が行われました。
こうして誕生したのが京浜工業地帯です。
この新しい工業地帯を発展させるためには、原料や製品を運ぶ「貨物輸送」と、そこで働く人々を運ぶ「従業員輸送」の手段が不可欠でした。
そのために敷設されたのが、鶴見臨港鉄道だったのです。
つまり、鶴見線は誕生の瞬間から「工場のための専用路線」としての性格を持っていました。
まだ地名もなかった埋立地の駅には、設立に関わった実業家たちの名前が付けられました。
駅名 | 由来 |
---|---|
浅野駅 | 創業者・浅野総一郎氏 |
安善駅 | 出資者・安田財閥の安田善次郎氏 |
大川駅 | 製紙業界の重鎮・大川平三郎氏 | 武蔵白石駅 | 日本鋼管創業者・白石元治郎氏 |
扇町駅 | 浅野家の家紋「扇」 |
その後、第二次世界大戦中の1943年に軍事的に重要な路線として国有化され、国鉄を経て現在のJR鶴見線となりました。
この「工場のために作られた」という歴史が、現在の鶴見線の姿を決定づけています。
2. 謎①:なぜ鶴見線の駅はほとんどが無人駅なのか?
鶴見駅を除く鶴見線のほぼ全ての駅は、現在、無人駅となっています。
首都圏では非常に珍しいこの形態には、主に3つの理由があります。
理由1:極端な「通勤特化」路線であるため
鶴見線は京浜工業地帯の中心部を走るため、利用客の大多数は沿線の工場や事業所に通勤する人々です。
そのため、利用状況には極端な偏りがあります。
平日の朝と夕方のラッシュ時には非常に混雑しますが、日中や夜間、そして工場が休業する休日は利用客が極端に少なくなります。
利用が特定の時間帯に限定されているため、全ての駅に一日中駅員を配置することは非効率です。
運営コストの観点から、無人化が合理的と判断されています。
理由2:歴史的な「関所」システム(鶴見駅の中間改札)
無人駅が多いと「運賃の支払いはどうするのか?」という疑問が湧きますが、鶴見線ではこれを解決する独特なシステムが長年採用されていました。
鶴見線を利用する人の多くは、京浜東北線など他の路線から鶴見駅で乗り換えます。
そのため、鶴見駅の乗り換え通路には「中間改札」が設置され、まるで「関所」のように機能していました。
この中間改札で鶴見線区間の運賃チェックや精算を一括して行っていたため、途中の各駅に駅員や複雑な自動改札機を置く必要がなかったのです。
理由3:ICカードの普及とシステムの進化
SuicaやPASMOといった交通系ICカードの普及は、この無人化システムをさらに進化させました。
各無人駅には、ICカードをタッチするだけの「簡易改札機」が設置されました。
これにより、駅員がいなくても、どの駅から乗降したかの記録が正確に把握できるようになりました。
その結果、長らく鶴見駅の「関所」として機能してきた中間改札はその役割を終え、2022年に撤去されました。
現在では、防犯カメラやインターホンによる遠隔監視技術も進化し、無人駅の運営を支えています。
3. 謎②:衝撃!大川駅の時刻表はなぜ1日数本しかないのか?
鶴見線の中でも特に異彩を放っているのが、大川支線の終点「大川駅」です。
その時刻表を見ると、初めての方は目を疑うでしょう。
曜日 | 運行本数 |
---|---|
平日 | 朝の7時台と8時台に各2本(計4本)、その後17時台まで約9時間も電車がなく、夕方以降に5本の、計9本。 |
休日 | 7時、8時、18時台に各1本の、わずか計3本。 |
大都市・川崎市にありながら、なぜこのような極端なダイヤになっているのでしょうか。
答えは「完全なる通勤専用駅」だから。
その理由は、大川駅が「周辺の工場への通勤のためだけに存在する駅」として機能しているためです。
大川駅周辺には、三菱化工機、日清製粉、昭和電工(現・レゾナック)といった大規模な工場が密集していますが、住宅はほとんどありません。
つまり、この駅を利用するのは、ほぼ工場へ通勤する従業員に限られるのです。
ダイヤは工場の始業時間と終業時間に合わせて設定されています。
曜日 | 運行の特徴 |
---|---|
平日 | 朝の出勤時間帯と、夕方以降の退勤時間帯に集中して運行。 従業員が働いている日中は利用者がいないため、列車を走らせる必要がない。 |
休日 | 多くの工場が休業となるため利用者が激減し、最低限の本数のみが運行。 |
まさに、工場の勤務カレンダーと共に動いている駅。
大川駅は、鶴見線が持つ「産業路線」としての役割を最も色濃く残している区間と言えるでしょう。
4. 大川駅だけじゃない?日本に存在する「都会のローカル線」
「大都会でこれだけ運行本数が少ない駅は大川駅くらいではないか?」というキニナルですが、非常に稀ではあるものの、日本全国を見渡すと他にも類似した駅が存在します。
これらも工業地帯の通勤に特化した路線です。
路線名・駅名 | 特徴 |
---|---|
JR和田岬線 和田岬駅 (兵庫県神戸市) | 沿線には三菱重工業などの大規模工場があり、大川駅と同様に日中の運行は一切ありません。 休日は朝1本・夕方1本の計2本だけです。 |
名鉄築港線 東名古屋港駅 (愛知県名古屋市) | 名古屋臨海部の工業地帯へのアクセス路線であり、ダイヤは朝夕のみとなっています。 |
JR鶴見線 海芝浦駅 (神奈川県横浜市) | 東芝エネルギーシステムズの敷地内にあり、関係者以外は改札から外に出られません。 ホームから京浜運河を一望できる絶景が人気です。 ちなみに、はまれぽ編集部は2016年のイベント取材で、改札の外に出たことがあります! 関係者以外乗降禁止の「海芝浦駅」も潜入!キリンビール&東芝の工場見学とは? |
5. 鶴見線の未来:産業遺産から観光資源へ
鶴見線は、日本の高度経済成長を支えてきた歴史を今に伝える、生きた産業遺産と言えます。
開業当時の姿を色濃く残す国道駅のレトロな雰囲気や、工場地帯ならではの車窓は、他の路線では決して味わえない魅力を持っています。
近年、この独特な景観が新たな観光資源として注目されています。
観光テーマ | 内容 |
---|---|
工場夜景ブーム | 鶴見線沿線は絶好の工場夜景スポットであり、夜景鑑賞を目的としたツアーなども企画されています。 |
秘境駅・絶景駅めぐり | 海芝浦駅の絶景や、大川駅のような特殊な駅を訪れる観光客が増加しています。 |
日本の産業構造が変化しても、多くの基幹工場が稼働し続ける限り、鶴見線の通勤路線としての役割は変わりません。
同時に、「都会に残された最後の異空間」としての価値も高まっていくでしょう。
調査結果
JR鶴見線が持つ「無人駅の多さ」や「極端な運行本数」は、この路線が京浜工業地帯の発展と共に歩み、産業を支えるために最適化されてきた結果です。
一見ミステリアスに見えるその姿は、日本の産業発展の歴史を映し出す鏡とも言えます。
もし機会があれば、都会の中の非日常を味わいに、鶴見線を訪れてみてはいかがでしょうか。
ただし、くれぐれも時刻表の確認はお忘れなく!
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