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横浜市営地下鉄ブルーライン高島町駅、同じ階なのにホームが2分割?理由がキニナル!

横浜市営地下鉄ブルーライン高島町駅、同じ階なのにホームが2分割?理由がキニナル!

ココがキニナル!

市営地下鉄の高島町駅は1面2線の島式ホームなのに、なぜ上下線の間が壁で仕切られているのでしょうか。建設時にわざわざホームを2分割にした理由が気になります。(こーちゃさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

ブルーライン高島町駅は1976年に開業したが、地下埋設物や地盤、国道1号線との関係でシールド工法により建設。線路ごとにトンネルを掘ったため、ホームは同じ階なのに2分割されている。

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ライター:若林健矢


横浜市営交通は2021年で発足100周年!過去には市街地のあちこちに市電が行き交い、今はバスや地下鉄がその役目を担っている。実は横浜市営地下鉄の車両にも、横浜市営交通100周年記念ヘッドマークが掲出されているのだが、すでに見た人も多いのではないだろうか。

そんな横浜市営地下鉄ブルーラインに関するキニナルを今回は調査していきたい。投稿者の「こーちゃ」さんによれば、高島町駅のホームは上下線で分割されているとのことで、この理由がキニナル!

ふだんブルーラインに乗っていて高島町駅を通りかかったとき、車窓から反対側ののりばが一瞬見えたと思いきや、すぐさま青い壁に視界が阻まれてしまう経験をした人は筆者以外にも少なくないはず。早速現地へ向かってみよう。



意外と深くに造られた高島町駅、シールド工法が活躍




ということで今回のテーマである、ブルーラインの高島町駅まで来た。JR根岸線と、東急東横線の廃線跡に並行する国道16号線に面しているのが2番出入口で、ビルをへだてて反対側、新横浜通りに面しているのが1番出口。1番出口はエスエスビルと一体化しているため、こちらのほうが目立ってわかりやすい。


高島町駅1番出口



2番出口は国道16号線に接し、JR線も見える


今回も駅構内での撮影になるため、横浜市交通局に取材協力の相談をし、快諾していただいたのだが、下調べの段階でキニナルへの答えがある程度わかった。

高島町駅は、「シールド工法」という工法で、地下4階にもおよぶ深さにホームが建設された。シールドマシンを地中に通し、後からコンクリートのブロックを壁に埋め込んでトンネルを形成していく方法だ。

だから高島町駅のホームは上下線で分断されている・・・、ということなのだが、やはり画像を交えて詳しく紹介したい。ということで、横浜市交通局施設課の望月啓明(もちづき・ひろあき)さんに立ち会ってもらい、駅構内を撮影しながら話を聞いていこう。



国道1号線と地下下水道を避けなければならない難工事




横浜市営地下鉄ブルーライン・高島町駅は1976(昭和51)年、上大岡~上永谷間と、伊勢佐木長者町~横浜間開通の際に開業した。

地下4階にホームがあり、地表面からホーム面までの深さは26m。開業当時のホームの中では最も深くに掘られた駅だった。ちなみに現在は三ッ沢上町駅が一番深い(地表面からホームまで30.5m)。


こちらは下りホームで、上りホームは壁をへだてた反対側


上下線ともホームが同一階に存在するので、一見するとホーム1面・線路2線の島式ホームっぽく思うかもしれないが、『地下鉄 横浜~上永谷開通記念誌』(横浜市交通局より)によると、高島町駅はホーム2面・線路2線の相対式ホームとして扱われている。

通常の相対式ホームは、過去に訪れた岸根公園駅や相鉄の羽沢横浜国大駅のように、線路2本を挟む形で上下線それぞれのホームが設置されている。


本来の相対式ホームはホーム同士が向かい合う(2019年10月4日、岸根公園駅取材時に撮影)


その理由が「シールド工法によって上下線別々のトンネルを建設したから」なのだが、そもそもなぜこんなことをしなければならなかったのか。大きく分けて理由は2つある。

1つは地盤が軟弱であること。海岸部は地盤が弱いことが多いため、シールド工法を用いて、コンクリートのブロックでトンネルの壁を補強しつつ、地中深くにトンネルを掘らねばならなかった。地盤を強化する補助工法を用いれば別の工法でも建設できたかもしれないが、コストとの兼ね合いによってシールド工法に決定されたと思われる。

もう一つの理由は、地下埋設物との関係だ。高島町付近には口径4,800mm(直径4,8m)の地下下水道がすでに通っており、それを避けなければならなかった。それに加えて国道1号線のアンダーパスが計画されていたため、そのスペースを確保できるように余裕を持って深く掘ることを、横浜市は当時の建設省より条件づけられていた。

高島町交差点では国道1号線(東海道)と県道13号線(新横浜通り)が交わり、JRの線路をくぐるところで国道16号線も合流するため、建設当時のここは市内有数の混雑地帯だったとのこと。


地下鉄建設前、高島町交差点付近は屈指の混雑地帯だった


その国道1号線のアンダーパスは、高島町交差点の高島トンネルを見てもらうと分かりやすい。高島町交差点側からトンネルに入ると、帷子川の少し手前で地上の道路に合流する。このため高島町駅付近の地下には国道、下水道、地下鉄と、3種類のトンネルが入り組むことになり、地下鉄のトンネルが深くに掘られることとなった。


国道1号線のアンダーパスとして高島トンネルが通る




大きな一つではなく、上下線で別々のトンネル


ホームまで降りてみよう。先に述べた通り、高島町駅のホームはシールド工法で建設されているため、トンネル断面は丸い形状になっている。

といってもホームの足場や線路がある関係上、足元から天井部分までの半円が、乗客が見られる範囲になるだろう。階段・エスカレーターを降りて、エレベーターに向かって左側があざみ野方面、右側が湘南台方面に分かれる。


エレベーターを境に、あざみ野方面と湘南台方面で別々のトンネルに



ホームを奥に歩いていくとトンネルが半円状に



青の装飾もトンネル断面に合わせた形状


ホームの反対側、電車が停まる側の壁を見てみると、コンクリートのブロックが寸分違わず敷き詰められているのがわかる。これこそシールド工法で建設された何よりの証拠だ。

シールド工法では、シールドマシンで地中を掘削した直後にセグメント(コンクリートのブロック)を壁面に隙間なくはめ込み、壁面を構築している。埋め込まれているので全然そんな風には見えないが、セグメント一つの厚みは40cmもあるとのことだ。


壁面にはセグメント(画像上半分)がすき間なく敷き詰められている



横浜寄りのトンネルは、ホーム部分とは異なるセグメントのシールド工法


取材時にはホーム部のシールドトンネル断面図も見せてもらった。しかし一般向けの図ではないとのことだったので、筆者が独自に簡略化して描いてみた。手描きなので多少の誤差があるものの、トンネルはほぼ真円になっており、一般利用者からは見えない底部は平らにコンクリートが敷き詰められているようだ。


高島町駅ホーム階のシールド断面を簡略的にイラストにした


ところがホームの両端部に限り、「開削工法」を利用して立坑が設けられたという話もあった。ざっくり解説すると、地上から地面を掘削していき、鉄筋を組んでコンクリートを流し、箱型のトンネルをつくる。

そのコンクリートが固まったら土を埋め直して地上部分を復旧させる方法で、地下鉄建設では一般的な工法にあたる。実際にホーム階の両端を見ると、その部分だけトンネルが箱型になっていることに気づくだろう。


ホーム階の両端のみ、コンクリート壁が垂直なのがわかる



横浜寄りの終端部。出入口のかわりに非常口がある


おそらくだが、シールドトンネル建設時にシールドマシンを地下に送り込むために、地上から地下に向かって立坑が掘られたと考えられる。たとえるなら、地上4階建てのビルがまるごと地下に埋め込まれたようなイメージだ。明らかに断面が違うので、箱型トンネルとシールドトンネルの境目はすぐにわかる。


開削工法とシールド工法の境目は通路からすぐに見える



改札内はひたすら地下4階まで通じるビルのよう



地下1階から4階(ホーム面)までの階層を簡略化するとこんな感じ


地盤の弱い地区に、地下埋設物や国道のアンダーパス予定地を避けて駅を設けるために、ホームの両端部分のみ箱型で坑道を設け、そこからシールドマシンを発進させ、ホーム部分になるトンネルを地表から26mの深さに2本建設した。

だからこそ、高島町駅には一つの大きなトンネルではなくふたつの別々のトンネルが掘られ、同じ階なのに2面2線として扱われていることになる。



地下なのに山岳トンネルの工法が使われた!?




このように、弱い地盤に対処すべくシールド工法を用いて2本のトンネルを掘り、セグメントを設置して強固なトンネルを造ったことと、そのマシンを地下に準備するためにホーム両端だけ開削工法を使用したことは、ホーム階に降りてじっくり観察することでよくわかった。

それとは別にもう一つ、高島町駅のホームから見えるトンネルで、違う工法を用いた部分があることを望月さんが教えてくれた。それは「山岳工法」という方法で、桜木町~高島町間のトンネルに採用された。

山岳工法とは、その名の通り山にトンネルを通す場合に多く用いられる、山をくり抜く工法のこと。先に人が通れる程度の大きさの小さな導坑を掘り、それを軸に所定の断面まで導坑を掘り広げたのちにコンクリートを吹きつけてトンネルを形成する。

はまれぽでは過去に京急電鉄の野毛山隧道に関しても調べたが、野毛山隧道も山岳工法により建設された事例となる。野毛山隧道の場合は低設導坑先進工法という方法で、トンネルの底の部分に導坑を設け、左右と上部に断面を広げることで、あの赤い電車が通れるトンネルになった。


京急電鉄の野毛山隧道も山岳にトンネルが掘られている(過去記事より)


ブルーラインの場合は間違いなく地下なのに、山をくり抜く方法でトンネルが通されているのが不思議だ。しかし『横浜市営交通100年』によれば、桜木町から高島町付近と、ランドマークタワー近辺の地盤は意外にも、沿岸部にも関わらず固い地盤になっている。

その上で、トンネルの位置が当初の想定よりも深い位置になったため、山岳トンネル向けの工法が地下鉄にも役立ったようだ。


桜木町~高島町間のトンネルは山岳向けの工法で掘られていた


最後に一つ、100周年にあたって横浜市交通局からのコメントを預かっている。「横浜市営交通は1921年に路面電車に始まり、バス、トロリーバス、地下鉄と市民の皆さまの足として歩んできました。この100年間でご利用いただいたお客様は延べ約200億人近くにものぼります。これまでの100年に感謝を込めて、これからも、安全・安心と、皆さまの笑顔を乗せて、横浜の街とともに走り続けます」とのことだった。



取材を終えて




地上で見ているだけでも、高島町駅周辺は様々な道路が入り組んでいたり、首都高や根岸線の高架が通っていたりしているため、交通網の複雑さがなんとなく思い浮かばれる。地上だけでなく地下の見えない所にもインフラが張り巡らされている。

高島町駅はそういった環境に立地していることから、シールド工法によるトンネルが上下線で別々に建設された。


高島町駅には、確かに二つの別々のトンネルが通っている


その結果、ホームは上下線とも同じ階にあるのにのりばが別々になった。今やあざみ野駅と湘南台駅までの地下を繋ぎ、次は新百合ヶ丘駅までの延伸計画も進められているブルーラインだが、トンネル断面や構造を観察すると、意外な気づきがあるかもしれない。

ブルーラインだけでなく、他の地下鉄に関しても、キニナルことがあったらトンネルに注目してみるのもいかがだろうか。


―終わり―


取材協力
横浜市交通局

参考資料
『地下鉄 横浜~上永谷開通記念誌』 横浜市交通局
『横浜市営交通100年』 編著/横浜市交通局・横浜交通開発株式会社・一般社団法人横浜市交通局協力会 発行/神奈川新聞社 2021年

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  • 久しぶりにはまれぽにログインしたら採用されてて驚きました。ありがとうございます。そして調査お疲れさまでした。トンネルや駅一つをとっても、現場の特徴に合わせて沢山の技術や工法が駆使されていたのですね…!大変興味深い発見でした。あと、筆者さんイラストがすごくお上手ですね!1000形車両というチョイスによって駅開業時のイメージが的確に表現されていたと思います。横浜駅のホームから高島町駅方面を望むと、列車が急勾配を駆け上がってくるのが見える理由や、よく利用するやたら地下深い三ツ沢上町駅が実はブルーラインで1番深い駅であったことなど、いろんな事を知ることができる非常に面白い記事でした!長文になってしまいましたが楽しく拝読させていただきました!

  • 神奈川新町-横浜駅-藤棚-吉野町-屏風浦で計画されていた地下鉄2号線が国道1号の地下を通る予定だったので、それにも干渉しないようにする必要があって大変だったようです

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