京急線戸部駅~日ノ出町駅間のトンネルのカーブが凄いのはなぜ?
ココがキニナル!
京浜急行の戸部と日ノ出町の間にある長いトンネル。先頭車両で観察していると結構グニャグニャと曲がっている事に気づきました。なぜ、あそこまで曲げる必要があったのか調査をお願いします(zumiwoさん)
はまれぽ調査結果!
京浜電鉄(当時)が横浜~日ノ出町間を建設する際に横浜市や地域と協議を重ねた結果、曲がりくねるようにトンネルを建設したと推測できる。地上の老松中学校を避けた可能性も高い。
ライター:若林健矢
京急の電車は風景変化に富んでいる。JR線と並んで走ったり、多くのトンネルを駆け抜けたり、そして車窓から海が見えたりする。そんな中で、京急線の戸部駅~日ノ出町駅間には長いトンネル区間があり、これが意外と曲がりくねっているという投稿があった。今回はこのトンネルにまつわるキニナルを解明していこう。
さっそく現地で調べてみた
何はともあれ、乗ってみなければ始まらない。まずは戸部駅までやって来た。
戸部駅の改札は高架下。柱のレンガがアクセント
自動車の行き交う国道1号線を跨いで横浜方面へ
ホームから、日ノ出町駅がある浦賀方面を見てみると、視線の先にはさっそく1つ目のトンネル。緩やかに右に曲がりながらここをくぐっていく。今まで高架だった線路が、トンネルを出た瞬間に切り通しになっているのが面白い。
戸部駅を出てすぐに1つ目のトンネルが待っている
トンネルを抜けると、そこは掘削区間だった
線路の部分だけ掘り下げられた掘削区間は、まるで屋根のないトンネルのよう。そして2つ目のトンネルを抜けてすぐに3つ目のトンネルに、緩い左カーブとともに入っていく。これこそがキニナル投稿のトンネルに間違いない!
奥の跨線橋(こせんきょう)のさらに先が野毛山のトンネルの入口だ
地図ではトンネル内はまっすぐ通っているように見えるが、実際は確かに曲がりくねっている。浦賀方面に向かってゆるい左カーブとともにトンネルに入った後、地上にある横浜市立老松(おいまつ)中学校を避けるようにカーブが連続し、トンネルを抜けると同時に日ノ出町駅に到着だ。実際に通った線路は下のようになる。
青いラインがマップで表示されるが、実際はおおむね赤いラインのよう(© OpenStreetMap contributors)
野毛山公園入口。電車はまさに公園の下を通っている
日ノ出町駅のホームもかなり急なカーブ上に造られている。ホームと投稿のトンネルの間にある跨線橋から見ても、その様子は一目瞭然!
車内から、前の車両が見えてしまうくらい大きなカーブ
日ノ出町駅でカメラを構えるとついこの構図で撮りたくなる
上から見てもホームのカーブ具合がよくわかる!
インターネットのマップを見るだけだと気づかないが、電車に乗ると確かにトンネル内のカーブを体感できた。特に日ノ出町駅側は割と急なカーブで、快特も速度を落とさざるを得ない。このカーブができた理由を探っていくわけだが、まずは京急電鉄に聞いてみたい。
ということで、京急電鉄広報部にこのトンネルについて問い合わせたところ、このトンネルは「野毛山隧道(のげやまずいどう)」という名称とのこと。「隧道」とはトンネルのことだ。野毛山隧道は1931(昭和6)年に開通し、以来大きな変化は今までにないが、日々の安全運行を維持するために適宜補修を行っているようだ。
ちなみに隧道の長さは、後で調べたところ約658メートルあった。
跨線橋から野毛山隧道側を見るとこんな感じ
少しマニアックな話だが、どんな風にこのトンネルが掘られたのだろうか。その回答として「底設導坑先進工法(ていせつどうこうせんしんこうほう)」という工法を教えてくれた。この工法は、隧道の底に断面の小さなトンネル(導坑)を先に掘り、その導坑を拡げてトンネルを形成する方法だ。資料を参考に筆者がイラスト化してみたので参考になればうれしい。
断面の小さな導坑を先に掘り、それを外側に広げてトンネルを形成する
そしてトンネルのポータル(入口)に注目すると、トンネルの壁になる部分にはアーチ状に、その周囲には水平に石が積まれ、年季と重厚感を感じられる。このような石積みのポータルがあるトンネルは、戦前に造られたものが多いようだ。
戦前から存在する石積みのトンネルポータル
深く歴史あるトンネルを現代の車両たちが行き交う
野毛山隧道のことが少し分かったけれど、肝心の「なぜトンネル内部が曲がりくねっているか」ということについては、残念ながら京急側に回答できる資料がなかったとのこと。それならば、筆者・若林自身でいろんな側面から理由を探っていこうではないか。